『マインクラフト』RTA、前人未到の「7分切り」世界新記録がクリア直前で幻に。きっかけは“わずか0.25秒の偶然”
『マインクラフト』のRTAにて、あるカテゴリの世界記録更新が見えたものの、クリア直前で悲劇が走者を襲ったようだ。

ゲームRTA(スピードラン)走者のskycrab1氏は6月3日、『マインクラフト』のRTA動画を投稿した。ただし、記録として認定はされていない。世界記録を大幅に塗り替えるはずだったランは、誰もが予想できなかった不運により幻となってしまった。
RTAにはプレイ時の条件を定めた「カテゴリ」と呼ばれるものが存在する。同じ条件でプレイすることで、公平にタイムを競い合える仕組みだ。skycrab1氏がプレイしたのは「Any% Random Seed Glitchless」、ゲームのバージョンは1.16.1。シード値を指定せずにランダムにワールドを生成し、エンダードラゴンを倒してエンディングに突入するまでの時間を競う。なお「Glitchless」カテゴリでは、ルールに記載のある許可されたバグのみが利用可能となっている。本カテゴリの世界最高記録は本稿執筆時点で7分1秒494(ゲーム内時間)。skycrab1氏が保持する記録は7分23秒784で、世界3位につけている。
skycrab1氏はTwitchでたびたび本RTAを走っており今回も同様にランを実施。その一部始終はYouTubeの動画に収められている。skycrab1氏は、ゲーム内時間にして6分17秒ごろに討伐目標であるボス「エンダードラゴン」の撃破に成功。リアルタイムで見守っていた誰もが、大幅な世界記録更新と世界初の7分切りを確信した。ところがその時、同氏を悲劇が襲う。エンダードラゴンと戦う場に生息する敵キャラクター「エンダーマン」の1体が敵対状態になっており、ゲームオーバーとなってしまったのだ。

悲劇となってしまったランではあるが、skycrab1氏の驚異的なプレイと強運は筆舌に尽くしがたい。まず、ゲーム開始直後にさっそく「荒廃したポータル」と「村」を発見。最終目標であるエンダードラゴンが生息する場所「エンド」に向かうためには、まずは「ネザー」と呼ばれる異空間を目指す必要がある。荒廃したポータルは、ネザーに向かう時間を大幅に短縮できる要素だ。さらに、ポータル近くや村に置かれていたチェストからは、金の斧、黒曜石、ダイヤモンドといった役立つアイテムの入手に成功。目にも止まらぬ速さでネザー攻略に必要なアイテムの数々がクラフトされ、1分10秒過ぎにはネザーへの突入を果たす。
その後、skycrab1氏はネザーをすいすいと駆け抜けていく。足場が不足している場所には村の家の屋根から作った木材で即席の足場を作り、高い場所から飛び降りた際の落下ダメージをボートを使って無効化。同氏がこれまでに積み上げてきた経験を物語る精度の高いプレイングだ。エンドに向かうために必要なアイテムのすべてを首尾よく入手して、4分11秒ごろにはネザーを脱出する。


元の世界に戻ってきたskycrab1氏は、エンドにつながるポータルの位置を特定するアイテム「エンダーアイ」を宙に投げる。ここでゲーム画面の表示が変化。これは本カテゴリでの使用が認められている外部ツール「Ninjabrain-bot」によりサブピクセル単位で精密な測量をおこない、1回投げるだけでポータルの位置を特定している。エンダードラゴン撃破に欠かせないアイテム「ベッド」を作成し、移動時間短縮のため再びネザーを経由して移動。短距離ワープをおこなうアイテム「エンダーパール」を連投して、あっという間にポータルが存在する「要塞」に到着する。
ゲーム内時間にして5分45秒ごろ、skycrab1氏はエンドに到着。高所を飛んでいるエンダードラゴンの近くまで瞬く間に到達し、エンドで使用すると大爆発を起こすベッドを利用して大ダメージを与えていく。そしてゲーム内時間6分17秒ごろ、エンダードラゴンの撃破に成功。あとは撃破後に生成されるポータルに飛び込むだけだ。

ここでskycrab1氏は時間短縮のため、あらかじめポータルが生成される位置へと移動をおこなう。こうすればポータルが生成された瞬間に飛び込んだ判定がおこなわれ、時間短縮につながるためだ。あと数秒待っているだけで、30秒近い大幅な更新となる世界記録が樹立されるはずだった。ところが、同氏を待っていたのは突然のゲームオーバー画面だった。動画の最後には、「Nei!」などと悲痛な叫びをあげるskycrab1氏の声が残されている。
動画に寄せられたコメントによれば、動画中の5分49秒ごろにエンダーマンと視線が合っていたのだという。skycrab1氏が移動のためにエンダーパールを投げた後、待ち時間を活かしてクラフト画面を開いていた時間だ。エンダーマンはプレイヤーと15フレーム(60分の15秒、つまり0.25秒)視線が合うと敵対状態に変化する性質を持つ。エンダーマンの攻撃は通常であれば数発は耐えられる。しかしベッドの爆風やエンダーパールを使った移動により体力が減っていたskycrab1氏にとっては致命傷だ。クラフト画面を開いている時間があと数フレーム短ければ、クラフト画面を開く際の視線が4ピクセルずれていれば、今回の悲劇は起きていなかったと考えると、非常に惜しい結果と言えるだろう。
ほんの些細な不運のめぐり合わせで、世界記録は幻となってしまった。skycrab1氏の落胆の深さは計り知れない。しかし同氏のランの凄まじさは多くの視聴者に驚きをもたらしただろう。「7分切り」を目指すRTA走者たちの挑戦は、まだまだ終わらない。